雪のいと高うはあらで (訳)
今朝は昨夜の雪が溶けずに、うっすらと残っていました。
うっすらとした雪景色の夜に、風流人と話に花を咲かせた短編小説を訳しました。
角川文庫版『枕草子 下巻』第176段です。
雪が、たいして深くはなくうっすらと積もっているのなんて、最高にいい。
そのうえ、雪がとても高く降り積もっている夕暮れから、廂の端近くで、気の合う人2~3人くらいで火鉢を真ん中に置いて世間話などをしているうちに暗くなってしまったけれど、こちらには灯りも点さないので雪の光がとても白く見えているところで、火箸を使って灰などをいじって、感動したことも興味深いことも語り合っているのが、とてもいい。
夜の始めもこのまま過ぎてしまっただろうかと思ううちに、沓の音が近くに聞こえるので、不審に思って外を見やっていると、ときおり、こういう日に思いがけなく姿を現わす人であった。
「今日の雪をどのようにと、思いをはせ申し上げたのだが、どうにもならないことがあって、そこにこの時間まで居て」などと言う。
「今日来む」などの類の歌のことを言ってるのであろう。
昼あったいろいろなことなどを皮切りとして、さまざまなことを話す。
円座だけ差し出したが、片方の足は垂らしたままであって、寺の鐘の音とかも聞こえる頃まで、廂の内側も外側も、この話には飽きることがない。
夜明け前に帰ると言って、「雪、なにかの山に満てり」と朗詠しているのは、とても素敵だ。
女だけではそのようにはとても夜通し話すことはできないだろうと、ふつうよりは、趣深く風流な様子などを語り合った。