秋の夜の月をよむ
『後拾遺和歌集』は八代集のうちの4番めの勅撰和歌集です。
成立は応徳3年(1086)、白河天皇の勅により参議兼右大弁藤原通俊が撰歌したとされています。
収められている和歌の範囲は村上天皇から白河天皇までの130年間です。
とくに女房文学の華やかな、藤原摂関時代の和歌が多く収められています。
そこで、10月6日の中秋の名月にちなんで、『後拾遺和歌集』の秋の月の和歌の中から気に入ったものを載せていきます。
引用元は、岩波書店の『後拾遺和歌集 (新日本古典文学大系8)』です。
寛和元年八月十日、内裏歌合によみ侍ける
藤原長能
いつも見る月ぞと思へど秋の夜はいかなる影をそふるなるらん
八月許、月雲隠れけるをよめる
前大納言公任
すむとてもいくよもすまじ世の中に曇りがちなる秋夜(あきのよ)の月
広沢の月を見てよめる
藤原範永朝臣
すむ人もなき山里の秋の夜は月の光もさびしかりけり
八月十五日によめる
惟宗為経
いにしへの月かゝりせば葛城の神は夜ともちぎらざらまし
赤染衛門
今宵こそ世にある人はゆかしけれいづこもかくや月を見るらん
題不知(だいしらず)
読人不知(よみびとしらず)
秋も秋こよひもこよひ月も月ところもところ見る君も君
或人云、賀陽院にて八月十五日夜月おもしろく侍りけるに、宇治前太政大臣歌よめと侍りければ、覚源法師のよみけると言へり