歌占(うたうら)
歌占(うたうら)というものがあるそうです。
1首づつ和歌の書かれた紙を選び、その歌の意味から吉凶を占うそうです。
珍しいと思ったけど、よく考えたら春日大社、平安神宮、上賀茂神社などのおみくじも和歌から意味を読み取る形式でした。
『百人一首歌占鈔 (和泉選書)』は嘉永元年(1848)に浪華の花淵松濤という人が出版した、当時行われていた歌占に使われていた百人一首の歌の心と、それがあらわす易の卦が書かれている本です。
百人一首の成立には諸説あるようですが、この本によると、藤原定家は他の撰集とは違い、百人一首は占いを行うかのごとく心に浮かぶ歌を書き記していったのであるとしています。
すなわち、それらの歌にはもともと占断のための深遠な意味が備わっていたということです。
100首に64の卦を当てはめるので当然卦が重複する歌もあります。
占い方は、清浄な机の上などに雑然と乱して100枚の紙を置き、1枚を選び取ります。
そしてこの本(『百人一首歌占鈔』)のその歌に対応するページを開いて、吉凶を読み取ります。
本の内容の全部を抜粋することはできないので、数首だけ卦を書きとどめておきます。
私は易はわからないので、これも本から意訳します。
月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど
(大江千里)
《山火賁》思いをめぐらして、心をくだく
夜をこめて鶏のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ
(清少納言)
《沢地萃》構え守って、出入りを許さない かれこれ混じることはない
瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
(崇徳院)
《風水渙》苦労多く、つねに憂いから逃れることを思う
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへばしのぶることの弱りもぞする
(式子内親王)
《水風井》物事に頓着せず、思うままに取り計らう