月を詠む

2005年9月20日近現代短歌

中秋の名月に向けて、近・現代短歌にどんな月を詠んだ歌があるだろう、と思って家にある本で探してみました。
月といえば素直にいけば平安貴族の観月会での歌合わせを思い起こすのですが、それは十三夜のときに調べることにして、今回の名月では、近・現代短歌の月の歌をピックアップしようと思いました。

近代短歌の鑑賞77』と『現代短歌の鑑賞101』で調べました。
入門者に比較的親切な本だと思います。

私は近・現代短歌に全く明るくない、単なる朴念仁であります。
調べてみての感想ですが、近・現代短歌では「森羅万象によって生かされている自分」よりも「森羅万象は関係なく、自分が生きている」ことに重きを置いていると思いました。

「月」の言葉が用いられる歌は、「月」そのものではなくて、自分の内面性を表現するための道具のひとつとして「月」を使っているに過ぎません。
名月だから詠んだ歌、というものはその2冊の本を見た限りでは見つけられませんでした。

しかし写真1ページに短歌が1首だけ載せられている形式の月の写真集には、とてもよく似合います。
詩よりもいいです。
さすが、研ぎ澄まされた散文です。

前述の2冊の本の中で、よいと思った歌8首です。
秋以外の季節感の明らかなものは除外しました。

山の端に月はのぼりぬわが笛を今こそ吹かめ月はのぼりぬ

佐佐木信綱

かすがの に おしてる つき の ほがらかに あき の ゆふべ と なり に ける かも

會津八一

月読みのあかり露けき中空に鴟尾の甍のまさやかに見ゆ

新井洸

夜の路、前に人あり領巾(ひれ)振りぬ、月より来しといふかたちして。

平野万里

仰ぎ見る夜空しづけししみじみと月の面(おも)より光流れ来(く)

土田耕平

澄む空の月の光を受け歩むこおろぎの夜の身の影一つ

武川忠一

三輪山の背後より不可思議の月立てりはじめに月と呼びしひとはや

山中智恵子

萩叢も尾花もいまはしづもれるこの世照らして胴色(あかがね)の月

藤井常世

Posted by 管理人めぶき