平家物語の舞台 祇王寺
祇王寺
嵯峨野にある祇王寺へは一昨年の酷暑の頃に参拝しました。
ここと、隣接する滝口寺は見事な紅葉の見られる寺らしいですが、葉も苔も青々としている時期も良いものです。
祇王寺は、平安時代にこの地にあったという往生院三宝寺の残された塔中のうちの一つです。
明治28年(1895)、ここを管理していた大覚寺による再建計画に、当時の北垣国道京都府知事が応えて別荘の茶室を寄付、現在の姿になりました。
祇王の話
『平家物語』のヒロインの1人、白拍子の祇王は平 清盛の寵愛を得ていました。
そこへ若い白拍子の仏御前が現れ、彼女に心奪われた清盛は祇王と妹の祇女、母刀自を屋敷から追い出してしまいます。
3人は嵯峨野の往生院三宝寺の塔中に隠棲し、念仏を唱え、浄土への往生を願う日々を送っていました。
翌年の秋、栄華は長く続かぬもので自分もいずれ祇王のようになると悟り、すでに髪を下ろした仏御前が訪ねてきました。
3人は彼女を受け入れ、より一層念仏三昧し、往生の本懐を遂げたといいます。
祇王寺には、仏御前、祇女尊尼、本尊大日如来、清盛公、祇王尊尼、祇王尊尼の母の順で木の坐像が安置されています。
平 清盛もともに供養されているのです。
白い猫
この寺には「祇王さんの生まれ変わり」といわれる白い猫がいます。
私が小さな庵の本堂に上がり、荷物を置いて、仏さまを拝観しようとした瞬間、白猫が庵に上がり込んできました。
そして、右足を踏み出しかけた姿勢のままで硬直している私と外陣との中間に座り、毛繕いを始めました。
その後、猫は内陣と外陣の間を通り、仏間の奥へ姿を消していきました。
上品でしなやかな猫でした。
(追記:その白い猫は「まろみちゃん」といいますが、まろみちゃんは2013年7月に祇王さんのところへ旅だったそうです。
いまはチャムという猫が庵を守っているようです。)
昭和の頃、荒れていた祇王寺に入って、寺を建て直された高岡智照尼は俳人でもありました。
仏間の隣の間にある丸い吉野窓の障子越しに光線が虹のように見えるのだそうで、庵主はここがお気に入りだったといいます。
祇王祇女に紅葉明りのある障子
智照尼