十一面観音さまにお会いしたい ー 大和路秀麗八十八面観音巡礼

奈良・仏閣

十一面観音菩薩をお祀りする奈良県の8か寺で、「大和路秀麗八十八面観音巡礼」が結成されています。

8ヶ寺の十一面観音のお顔の数88と、男性・女性・子供の厄年の年齢(42歳 33歳 13歳)を合わせた数が同数なので、巡礼をすると観音さまのお慈悲によって多くの災厄から免れるとされます。

十一面観音とは

十一面観音は観音さまが人々を救うために、その人の状況にあったお姿やはたらきに変わられるうちの一つです。

右手は施無畏(人々の恐れの心を取り去り、安心させてくださる)手、左手に蓮華を差した水瓶を持った二臂像が圧倒的多数を占めるそうです。

頭上に10の小面をつけ本面と合わせて十一面を持つ。これは観世音菩薩の別名として、あらゆる方角(十方)に顔を向けたもの、として救済者として持つべき能力を具体化したものともいえよう。

『岩波仏教辞典』

頭にある10面のうち、正面の3面が「慈悲面」、左3面が「瞋怒(しんぬ)面」、右3面が狗牙上出(くげじょうしゅつ)面」、後方が「暴悪大笑(ぼうあくだいしょう)面」、一番上が「仏(ぶつ)面」です。

「慈悲面」は仏の教えを聞き入れている人たちへの慈悲の顔、「瞋怒面」は仏の教えを聞いていない人たちの悪行を戒める顔、「狗牙上出面」は行ないの正しい人たちへの励ましの顔、「暴悪大笑面」は悪にまみれた人々の行ないを笑い飛ばす顔、そして「仏面」は悟りのお顔です。

10面なのは、「十種の果報(勝利)」の現世利益を現わしているからです。

  1. つねに病に苦しめられない
  2. すべての仏さまの加護を得られる
  3. 財宝、衣服飲食が自然に得られる
  4. すべての敵を破る
  5. 慈悲の心を持つ
  6. 蛇の毒・熱病にかからない
  7. すべての刀杖の害を受けない
  8. すべての水難を避ける
  9. すべての火難を避ける
  10. 天命を全うすることができる

また来世の利益「四種の果報」もあります。

  1. 臨終のときにはすべての仏さまの来迎が見られる
  2. 永久に地獄に墜ちない
  3. すべての鳥や獣の害を受けない
  4. 命終のあとに無量寿国(阿弥陀如来の浄土)に生まれる

十一面観音は病苦やあらゆる厄難を取り除く仏さまとして、平安時代から信仰されてきました。

大和路秀麗八十八面観音巡礼の紹介

参加されている8ヶ寺と、安置されている観音さまの紹介です。

西大寺

 観音さま: 重要文化財
平安後期の円派系仏師、円信の遺作とみられています。
鎌倉時代に、京都の法勝寺十一面堂院から客仏として迎えられました。
右手に錫杖を持つ丈六の長谷寺式十一面観音で、のんびりとしたお顔をされています。

 公開時期: 随時

 西大寺: 天平神護元年(765年)、称徳天皇が金銅製の四天王像を安置するために建立しました。

 最寄り駅: 近鉄 奈良線 ・ 京都線 ・ 橿原線 大和西大寺駅

法華寺門跡

 観音さま: 国宝・秘仏
天竺(インド)の仏師の問答師が光明皇后のうつし身として造立したと伝わる、少し肉感的な観音さまです。
光背が蓮の葉と花でできていて、右手で衣を持ち右足を踏み出そうとしているかのようなお姿が特徴的です。

 公開時期: 春、光明皇后の命日(6月7日)の前後、正倉院展の開催同時期

 法華寺: 奈良時代、総国分尼寺として光明皇后の発願により創建されました。

 最寄り駅: 近鉄 奈良線 新大宮駅

海龍王寺

 観音さま: 重要文化財・秘仏
光明皇后が刻んだ十一面観音をもとにして、鎌倉時代に慶派の仏師が造立しました。
華やかで精緻な荘厳がすべて色彩やかに残されている「美仏」です。

 公開時期: 春、正倉院展の開催同時期

 海龍王寺: 奈良時代、藤原不比等の邸宅の寺院を娘の光明皇后が相続し、整えたのが始まりです。

 最寄り駅: 近鉄 奈良線 新大宮駅

大安寺

 観音さま: 重要文化財・秘仏
天平仏ですが肉付きがよく、衣の身体の線に沿って流れる具合が優美です。
癌封じのご利益があります。

 公開時期: 10月1日から11月30日

 大安寺: 聖徳太子が創建した熊凝道場が、奈良時代に平城京に移されたのが始まりです。

 交通: 近鉄 奈良駅から 奈良交通バス 「大安寺」下車

法輪寺

 観音さま: 重要文化財
平安時代前期の作と考えられています。
大きな眼、眉、唇が印象的で、力強い印象を受ける観音さまです。
後に回って、暴悪大笑面を拝見することができます。

 公開時期: 随時

 法輪寺: 推古30年(622年)に聖徳太子の子の山背大兄王らが建立した説と、天智9年(670年)に斑鳩寺焼失後に建立された説の二つがあります。

 交通: JR 大和路線 王寺駅・近鉄 橿原線 近鉄郡山駅から 奈良交通バス 「中宮寺前」下車

聖林寺

 観音さま: 国宝
もとは大神神社の神宮寺の大御輪寺(現在の大直禰子神社)の本尊でしたが、慶応4年(1868年)に廃仏毀釈の難を逃れて聖林寺に迎えられました。
明治20年(1887年)に、アメリカの哲学者フェノロサによって公開されることになりました。
お顔立ちやお姿は力強いのですが、指先には血が通っているかのような細やかさのある、不思議な観音さまです。

 公開時期: 随時
新収蔵庫の建立が決まり、観音さまは現在のお堂には令和3年(2021年)5月9日までいらっしゃいます。
工事中は東京国立博物館と奈良国立博物館の特別展に出開帳され、お帰りは令和4年(2022年)4月末の予定です。

 聖林寺: 和銅5年(712年)に藤原鎌足の長子の定慧が、談山妙楽寺(現在の談山神社)の別院として建立されました。
 交通: JR 万葉まほろば線(桜井線)・近鉄 大阪線 桜井駅から 桜井市コミュニティバス 「聖林寺」下車

長谷寺

 観音さま: 重要文化財
長谷寺の本尊で、丈六で右手に錫杖を持つ長谷寺式十一面観音です。
現在の観音さまは室町時代の天文7年(1538年)に大仏師運宗らによって造立された、日本で最大の木造の仏さまです。
特別拝観のときには足元まで近付くことができます。

 公開時期: 春、秋

 長谷寺: 朱鳥元年(686年)に道明上人が西の岡に銅板法華説相図(千仏多宝仏塔)を、神亀4年(727年)に徳道上人が東の岡に十一面観音をそれぞれ安置したのが始まりです。

 最寄り駅: 近鉄 大阪線 長谷寺駅

室生寺

 観音さま: 国宝
平安時代前期の作。
うっすらと彩色が残り、肉付きのいいお体と整ったお顔がとても美しい観音さまです。
優美でいて、威厳があります。

 公開時期: 寳物殿開館時

 室生寺: 天武天皇の勅願で役行者(小角)が創建したのが始まりです。

 交通: 近鉄 大阪線 室生口大野駅から 奈良交通バス 「室生寺行き」終点下車

専用のご朱印帳があります

専用の朱印帳は和綴じです。

ご朱印は散華の形をした朱印用紙に書かれます。(志納料300円)
いただいたご朱印を、観音さまのお写真の見開きページに収納できるように作られています。

巡拝は順不同、ご朱印は最初にお参りしたお寺で購入してください(志納料500円)。

(内容全面改訂しました 2021年3月10日)

2009年9月30日奈良・仏閣

Posted by 管理人めぶき