清少納言と殿方
このところ、ネットや図書館で、『枕草子』関連の資料をあさる生活をしています。
清少納言にかかわる、藤原行成以外の男性についても調べ始めました。
橘 則光
清少納言の最初の夫であった橘 則光は、角川文庫版『枕草子』第80段「里にまかでたるに、」の中に疎遠になってしまった話が収録されています。
藤原実方
藤原実方は、どうも清少納言と愛人関係にあったようです(婚姻までいったのか?)。
彼は藤原行成と争った後、陸奥へ赴任していますが、この争いの原因は清少納言をめぐってのことだとの説があります。
実方は在原業平のような雅でハンサムな歌人でしたが(光源氏のモデルともいわれるくらいのハンサム)、仕事に関しては要領の悪いタイプだったようです。
藤原斉信
藤原斉信は、資料によって「出世の下心丸出しで清少納言に近づいていて、彼女は嫌っていた」「清少納言とはプラトニックな関係だった」と正反対な捉えられ方をしています。
源 経房
源 経房は『枕草子』を持ち出したり、清少納言の隠棲先を知っていたりする人ですが、わからないことが多い人です。
『枕草子』は清少納言のすべての事実を書いてはいない
清少納言の男性を見る眼は表層的で甘い、と書かれている資料がありました(何人もの学者が口をそろえて言っています)。
たとえば、行成はただ自分の地位を上げたいがために、清少納言を利用しているだけだと。
清少納言に気に入られることにより、中宮を通させて天皇にアピールしているのだと。
また、日記を書くくらい自意識の高い女性は自分の男性関係の自慢もしたがるものだと。
例として紫式部や和泉式部があげられています。
私は、清少納言が『枕草子』を書いた動機は、「中宮の素晴らしさをとどめておきたい」ただ一心だと考えています。
清少納言は、道長に追い落とされていくつらい日々については一切書かず、ただただ中宮とそのサロンの素晴らしさを書いています。
そのような『枕草子』において、行成らの下心など、どうでもよかったのではないでしょうか。
女性として清少納言自身が、利用されていると感じていたかどうかはわかりません。
『枕草子』は、感性のきらめく作品ですが、ごく私的な愛憎などばっさり切り捨てられている随想です。
自分の心の奥底を封印して、女房としての自分を素晴らしい中宮のサロンと同化させて、忠実に『枕草子』を書き上げたのではないかと思います。
だから、経房は謎の重要人物なのです。