春は、曙。(感想)

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『枕草子』の冒頭を飾る「春は、曙。」は、中宮さまから賜った紙に「私はこのようなものを書きます」と宣言しているかのような章段です。
当時一般的だった和歌でもない、漢詩でもない、日記でも物語でもない、散文です。

歌詠みにプレッシャーを感じていた清少納言は、現代において「ものづくし」と分類されている章段のみをまとめて、「清少納言版歌枕集」を書きたかったのでしょう。
それを源 経房が持ち出したために、中宮さま以外の人の目に付きました。
彼女としてはもっと「歌枕集」を充実させたかったのでしょうが、残酷な運命に巻き込まれた後、一段落付いてから遺児となった脩子内親王のために「日記的章段」を書き足していったのだと考えます。

「春は、曙。」は部屋の中に閉じこもらざるを得ない当時の一般的な貴族のお姫さまではなく、能動的に感動するポイントを見つけに行っている女性の視線で書かれています。
部屋の奥ではなくて廂からであっても、山の稜線や飛ぶ鳥は意識的に見ないと目に入らないでしょう。
日常的に廂や廊下を移動する女房であるからこそ目にすることができ、その感動を散文で表したところに、彼女の感性の鋭さと自由さが感じられます。

さて、『枕草子』の第2段以降に彼女が「月光好き」「雨大嫌い」「雪が積もってるのが好き」な理由が徐々に出てきます。
その点でも、「巻頭の宣言」と呼ぶにふさわしい章段です。

Posted by 管理人めぶき